「できること」や「できる時間」をシェアすれば、
できることがたくさんある。

高知県高岡郡にある小さい村、日高村で活動するわのわ会。私たちは、地域の困りごとを解決するために生まれたNPO法人です。「できる人が、できる時間に、できることを。」を理念に、みんなで力を合わせながら、さまざまなカタチの事業やサービスを展開してきました。

メンバーは、地元に住む子育て中のお母さんを中心に、高齢者の方や障がいを持つ人たちもいます。みんな、それぞれに“働きたいけど働けない”“自分のやりたいことができない”などの悩みを抱えていました。

そこで私たちは、一人ひとりの「できること」や「できる時間」をみんなでシェアすることで、みんなが活躍する場所を増やしながら、新しい事業やサービスを生みだしてきたのです。

私たちが目指すのは、日高村を「誰もが、いつまでも自分らしく暮らせる地域」にすること。まずはわのわ会が、そのままの自分で働ける場所、そのままの自分が求められる場所になるよう、そして、そのことを自分自身でも実感できるよう、日々試行錯誤してきました。

2005年に設立して以降、少しずつ、少しずつ、サービスや事業を広げ、今では行政や、自治体、大学などと連携しながら地域全体の経済発展に貢献することも増えてきました。

一人では実現が難しいことでも、みんなで協力すれば必ずできる。そのことを知っているからこそ、私たちはこれからも、みんなで力を合わせながら、地域に貢献していきます。

理念/私たちの考える「ダイバーシティ」

「できる人が、できる時間に、できることを。」
誰もが活躍できる社会をつくるために大切なこと。

子育て中だから自分の時間が自由に取りづらい、年齢を重ねることで仕事ができなくなった、障がいの影響で活動が制限されてしまう……など、世の中には、さまざまな事情によって、自分らしく生きることを制限されてしまっている人がたくさんいます。しかし、それを「できないから仕方がない」と片付けてしまっては、社会的弱者と呼ばれる人たちが増えていく一方です。

だからこそ、私たちは「一人でやる」のではなく、「みんなでやる」ことを大切にしてきました。その人の「できないこと」を探すのではなく、「できること」を見つけ、みんなで協力し合う。その仕組みをきちんと整えれば、時間がない人も、できることが限られている人も、どんな人でも活躍することができるのです。

わのわ会では、一人ひとりの個性や事情に合わせて、お仕事をお任せしたり、役割を担ってもらったりしてきました。自分にできることを、自分にできる範囲で取り組み、誰かに感謝や自分の評価につながると、それが生きがいとなり、充実した毎日へと結びつきます。そうすると、少しずつ「もっと頑張ろう」という気持ちが芽生え、自然と「できること」の幅が広がっていくんです。「自分はこんなこともできるんだ」「自分のしたことがこんな風に感謝されるんだ」そうした気づきが、さらなる成長に結びついたり、新しい可能性を拓くきっかけになったりします。

子育て中の方や、高齢者の方、障がい者の方など、さまざまなマイノリティの問題を抱える人たちが、お互いに支え、支えられながら、地域に欠かせない存在になっていく。それが、私たちの目指すダイバーシティのカタチです。

わたしたちのこれから

私たちが、変わらないこと。
変わるべきこと。

今でこそ、わのわ会は地域の困りごとを解決するために活動している団体として認知されるようになりましたが、2005年の立ち上げ当初はとにかく失敗の連続。私自身、わのわ会とはどういう団体なのか、どんな風に地域と関わっていくべきか……明確な答えが出せず、何度も、何度も、自問自答していました。

そんなわのわ会を支えてくれたのが、地域のお母さんたちです。彼女たちが、幼い子どもを育てながら私たちの活動に協力してくれたおかげで、わのわ会は少しずつ地域に馴染み、地域から求められる存在へと成長することができました。わのわ会が地域に新たな雇用を生みだす場となり、地域の経済発展に貢献できるようになったのは、間違いなく彼女たちのおかげです。

設立から10年以上が経過した今、彼女たちの子育ては少しずつ落ち着き、それぞれの家庭環境はもちろん、日高村全体の様子もずいぶんと変わってきました。新たに子育てをスタートさせた新米お母さんや、結婚を機に地元や都心を離れ、日高村へと移住してくる人が増えてきたように感じています。彼女たちの中には、同世代が少ない故に身近な相談相手がいなかったり、移住したばかりで人間関係がまだ築けていなかったりと、寂しさや孤独感を感じている人がいるかもしれません。時代が次の世代へと移り変わりはじめている今、わのわ会も次の段階へと進むタイミングがやってきたのです。

私たちの活動といえば、地域の人たちの困りごとを解決するため、たくさんの人たちと協力しながら村づくりをすること。それはこれからも、ずっと変わりません。そして、さらに進化していくためにも、ここで一度、原点に立ち戻ってみる必要もあると考えています。原点とは、「地域のお母さんたちのためにできることは何か」を考えること。例えば、新しいお母さんたちが抱える子育てや生活の困りごとを解決したり、移住してきたばかりでまだ地域についてよく知らないという家族の方々と一緒に新しいコミュニティを創出したり……「地域のお母さんたち」と一緒にやってきた私たちだからこそできることが、たくさんあるはずです。地域のためにできることは何か。地域の人々がいちばん求めていることは何か。これからもずっと模索し、その都度、私たちはその答えをカタチにしていきます。

2019年5月 わのわ会 理事長 濱田善久